[解説]
フェミニンでロマンチックなデザインを得意とするブランドです。デザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)氏が2001―2002年秋冬まで手がけた「クロエ(Chloe)」とともにトレンドセッターとなっています。マッカートニー氏は今やモード界のリーダーの一人。「元ビートルズのポール・マッカートニーの娘」という冠は今では全く無用となった感があります。
2005年春夏では風をはらんでふんわり揺れるエアリーなラインを打ち出しました。シフォンやリネン、ウオッシュド・シルク、コットンなどを素材に、身体の動きに合わせてたゆたうデザインを提案しています。
自然体の服作りが支持を広げています。着心地がよく、肌触りがやさしい彼女のコレクションは「クロエ」時代から高く評価されていました。キュートでウィットフル。ラグジュアリーでルーズ。洗練されたエスプリを感じさせるデザインは「クロエ」をよみがえらせる原動力になりました。
品よく甘い色使いや肩の力の抜けたデザインには、生まれながらにセレブリティーだった彼女のバックグランドが関係しているように見えます。上品でポップ、セクシーで都会的というミックステイストは、なかなか真似の難しいアプローチといえるでしょう。動物愛護の立場から、ファーとレザーを使わないことでも有名です。
カッティングの技術に裏打ちされたフィット感、ボリューム感に定評があります。ファッションの名門校、セントラル・セントマーティンズ校(Central St Martins College of Art & Design)で学んだ後、紳士服の街として有名なサビル・ロウで、専門的な仕立ての技を身に着けています。マスキュリン(男性的)なストラクチャーとフェミニンなフレーバーという難しい取り合わせを成功させている下地には、15歳からファッション界で積み上げてきた確かなキャリアがあります。
「クロエ」を離れたマッカートニー氏はイタリアの高級ブランド企業、グッチグループの支援を受け、自分の名前を冠したブランドを本格的に展開し始めました。グッチグループには「イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ」「ボッテガ・ヴェネタ」「アレキサンダー・マックイーン」などなどのブランドがあります。「クロエ」は2002年春夏から後任のフィービー・フィロ氏が主任デザイナーに就いています。
マッカートニー氏の後ろ盾となってきたトム・フォード氏とドメニコ・デ・ソーレ氏が2004年4月、グッチグループを離れ、状況に変化が出ています。2004年以降は従来のポップな感じが少し薄れた気がしますが、今後は「クロエ」時代のような、パンチの効いたアプローチも期待したいところです。
●ブランドデータ
[本国]
英国(ロンドン)
[経営・日本での展開]
グッチグループ傘下。日本では主にセレクトショップでの展開。ドイツのスポーツブランド「アディダス」と共同開発したスポーツウエア「アディダス・バイ・ステラ・マッカートニー(adidas by Stella McCartney)」を2005年春夏から日本でも発売した。
[歴史]
ステラ・マッカートニー氏は1971年、英国・ロンドンで、ポール・マッカトニーとリンダ夫人の間に末娘として生まれた。15歳でフランスの「クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)」ブランドの最初のクチュールコレクションを手伝い、ファッションの世界に足を踏み入れた。
ファッションの名門校、セントラル・セント・マーティンズ校を95年に卒業。卒業コレクションでは友人のスーパーモデル、ナオミ・キャンベルやケイト・モスを起用。作品はロンドンの有名セレクトショップ「ブラウンズ」やニューヨークの高級百貨店「バーグドルフ・グッドマン」が買い取った。
紳士服で有名なサビル・ロウで技術を学んだ。このときに習得したパターンやカッティングの技術が後に彼女のデザインを支える礎(いしずえ)となる。同じようにサビル・ロウで修業したデザイナーに、アレキサンダー・マックイーン氏がいる。
同校卒業の95年に、自分の名前を冠したファッション会社をロンドンに設立。「ステラ・マッカートニー」ブランドを立ち上げた。
26歳の若さでカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の後を継ぎ、98年春夏からフランスの老舗ブランド「クロエ」のレディース・プレタポルテの主任デザイナーに。2000年には歌手・マドンナのウエディングドレスを手がけた。
2001―2002年秋冬を最後に「クロエ」を離れる。2001年にグッチグループと契約し、「ステラ・マッカートニー」ブランドをリスタートした。2002年春夏からはパリ・コレクションに参加している。同年9月、ニューヨークのミート・パッキング・ディストリクト(MPD)に初の路面店を開く。
グッチが「イヴ・サンローラン」を買収した際は、「グッチ」のトム・フォード氏が「イヴ・サンローラン」に移り、フォード氏の信頼が厚いマッカートニー氏が「グッチ」を任されるのでは、という憶測が流れた。しかし、「グッチ」は毛皮やレザーを重要アイテムとしているため、毛皮もレザーも使わないマッカートニー氏が「クロエ」残留を希望し、この移籍は実現しなかったという伝説が残っている。
ライフスタイル誌「ウォールペーパー(Wallpaper)」の元発行者である出版人、アラスデア・ウィリス(Alasdhair Willis)氏と2003年に結婚。第1子となる男の子を2005年2月25日、33歳で出産した。
[現在のデザイナー]
ステラ・マッカートニー氏
[キーワード]
ロマンチック、フェミニン、グッチグループ、「クロエ」、「アディダス・バイ・ステラ・マッカートニー」
[魅力、特徴]
上品で軽やかなラインで着やすさ抜群。ヴィンテージテイストたっぷりで、ほかの服となじむところもうれしい。甘すぎないフェミニンのさじ加減が素敵です。
[関連リンク]
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「クロエ」
(ブランド解説)
・「ステラ・マッカートニー」の公式サイト
http://www.stellamccartney.com/
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