「カリスマ主婦」として日用品やアパレルのブランドを展開してきたマーサ・スチュワート氏がテレビに復帰します。株のインサイダー取引疑惑が持ち上がり、偽証罪で５カ月間、監獄の中にいたスチュワート氏が復活の場として選んだのは、どぎつい演出で人気のいわゆる「リアリティーショー」でした。

　「リアリティーショー」とは、恋人同士の片方に美女や美青年が強烈な誘惑を仕掛け、浮気の誘いに乗るかどうかを隠し撮りするような、視聴者が先の成り行きをどきどきして見守る構成のバラエティー番組のことです。日本ではロンドンブーツ１号２号が得意とするような仕立て方です。

　スチュワート氏が司会役に起用されたのは、９月２１日から始まる「ジ・アプレンティス　マーサ・スチュワート」。ビジネスでの成功を夢見る男女１６人が競争相手をけ落としながら、エリート社員に成り上がっていくストーリーです。「アプレンティス（Apprentice）」とは英語で「弟子」という意味で、参加者はスチュワート氏の弟子入りを目指して、チームを組みつつ、足を引っ張り合います。

　番組の途中で実際に企画力やプレゼンテーション能力などを試され、失敗すると、「貴様はクビだ」「この能なし」などと司会役から罵声を浴びせられる演出が受けた前シリーズの続編です。「マネーの虎」と「あいのり」の両方の要素が入っています。最後に残った１人は本当にスチュワート氏の会社、マーサ・スチュアート・リビング・オムニメディアに幹部として入社できます。ＮＢＣ系列で毎週水曜午後８時から放映されます。

　インサイダー疑惑で「カリスマ主婦」から一点、「金の亡者」「うそつき」といったマイナスイメージが染みついてしまったスチュワート氏。これまでの上品なイメージをかなぐり捨てて、「汚れキャラ」でしぶとく復活しようという作戦のようです。

　「ジ・アプレンティス」は前シリーズで不動産王のドナルド・トランプ氏が司会を務め、大人気を博しました。脱落する参加者に向かってトランプ氏が投げつける「お前はクビだ」の決めせりふは流行語にもなりました。

　もともとダークなイメージのあるトランプ氏が路線を敷いたとあって、視聴者はスチュワート氏にもどぎつい物言いとあからさまな成り金的振る舞いを期待すると思われます。こうした目線に応えて、スチュワート氏がどこまで「堕ちて」いけるのかが、視聴者の支持を得られるかどうかのポイントになりそうです。もっとも、視聴率を取ったからといって、汚名が晴れるわけではないのですが。