カジュアルウエア店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがハイファッション化を目指して動き始めます。実質的な創業者である柳井正氏が１１月１日付けで会長から社長に復帰し、陣頭指揮をとります。このハイファッション化のキーマンが同日付けで執行役員Ｒ＆Ｄ担当に就く勝田幸宏（かつた・ゆきひろ）氏です。商品開発・デザイン部門のリーダーとなります。

　勝田氏は米国有数の高級百貨店「バーグドルフ・グッドマン（Bergdorf Goodman）」から引き抜かれました。「バーグドルフ・グッドマン」ではメンズスポーツウエア部門のバイスプレジデント兼マーチャンダイズマネージャーでした。２００５年１月に設立したユニクロ・デザインスタジオ・ニューヨークの代表に３月から就いていました。

　勝田氏はもともと伊勢丹出身。その後、米国の高級セレクトショップ「バーニーズ・ニューヨーク（BARNEYS NEWYORK）」、米国の「ポロ・ラルフ・ローレン（Polo Ralph Lauren）」で一貫して商品を担当してきました。まだ４１歳という若さです。

　柳井氏が意識しているのは、スペインの「ザラ（ZARA）」やスウェーデンの「ヘネス＆モーリッツ（Ｈ＆Ｍ）」のようです。「ザラ」は「ギャップ（GAP）」や「ユニクロ」と同じく、衣料品の製造から販売まで手掛ける製造小売業（ＳＰＡ）の大手です。比較的手ごろな価格設定でいながら、モードを意識した商品を展開して人気を集めています。六本木ヒルズ（東京・六本木）にはたくさんのショップが入っていますが、実際に最もよく見かけるのは、「ZARA」の紙袋を肩から提げた人です。日本ではスペイン本社が１９９７年、アパレルメーカー中堅のビギグループと合弁で日本法人「ザラ・ジャパン」を設立しました。

　低価格衣料品店のチェーンを展開するＨ＆Ｍは２００４年、「シャネル」のレディースプレタポルテの主任デザイナー、カール・ラガーフェルド氏と組んで、破格の低価格ライン「カール・ラガーフェルド・フォー・Ｈ＆Ｍ」を期間限定で販売しました。「ステラ・マッカートニー（Stella McCartney）」ブランドのデザイナー、ステラ・マッカートニー氏とのコラボレーションも予定されているようです。

　１１月からの新体制では執行役員の権限を大きくし、これまでよりも自由に執行役員が判断できるようになります。勝田氏はニューヨークのデザイン開発部隊を指揮して、ファッション性の高い商品を投入することになりそうです。ただ、過去にもこうした試みが本社上層部の反対で実現しなかった苦い経験があるだけに、「専制君主」の柳井氏がどれだけ口出しを我慢できるかがポイントになるかもしれません。