「グッチ（Gucci）」のレディースプレタポルテ（高級既製服）部門のデザイナーに就いたフリーダ・ジャンニーニ（Frida Giannini）氏が初めてのコレクションとなる２００６年クルーズコレクション（cruise collection）を披露しました。彼女が以前から担当しているアクセサリーとのマッチングのよさもあって、ファッションジャーナリストやバイヤーの評判は上々で、「新生グッチ」はまずは無難なスタートを切りました。ウエアと雑貨の連動性を高めようという「グッチ」の狙いは当たったようです。

　「クルーズコレクション」とは、春夏物と秋冬物の間に発表されるコレクションです。言葉の通り、クルーズ旅行で訪れるリゾート地で過ごすための服というのがもともとのイメージです。ただ、近年の「クルーズコレクション」は年２回のコレクションで扱うのが難しい、春夏とか秋冬とか区別しにくい作品や、イメージ戦略の意味合いが強い通常のコレクションでは見せづらいリアルクローズ（現実的な服）を打ち出す場という色合いが濃くなりつつあります。

　今回のコレクションでは、「ゴージャス＆セクシー」で一時代を築いたトム・フォード（Tom Ford）路線に比べてトーンを落としたフェミニンを目指したようです。セクシーさを重視するフォードラインよりもソフトタッチのアプローチと言えるでしょう。

　ジャンニーニ氏はフォード氏が去った後の初仕事となった２００５年クルーズコレクションのアクセサリー部門で色鮮やかなワイルドフラワー柄の「フローラ（Flora）」を取り上げ、評価されました。当時モナコ王妃だった元女優のグレース・ケリーのために１９６６年にデザインされたスカーフの柄をよみがえらせました。

　「グッチ」は３月８日、デザイナーをそれまでのアレッサンドラ・ファッキネッティ（Alessandra Facchinetti）氏からジャンニーニ氏に交代させると発表しました。ファッキネッティ氏は前任者のフォード氏から引き継いでわずか２シーズンで「グッチ」を去ることになりました。

　ジャンニーニ氏が手がけるアクセサリー部門は比較的成功を収めており、今回のレディースウエア部門への起用はアクセサリー的要素や皮革製品を強化していこうとする経営方針の表れかもしれません。アクセサリー部門のデザイナーは兼務しています。

　公式発表は、ファッキネッティ氏が「グッチ」を離れる理由について「disagreement with management.（経営方針の不一致）」という表現しかしていません。ただ、フォード氏をサポートしてきたファッキネッティ氏が、フォード氏を追い出した現在の経営陣と対立しやすい立場にあったことは想像に難くありません。