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  (5/29 01:41) [news] 石津謙介氏の再評価進む

 亡くなったファッションプロデューサー、石津謙介氏の再評価が進んでいます。「TPO」という言葉の提唱だったことでも有名ですが、そのほかにも様々な足跡を残しています。スエットシャツを「トレーナー」と呼んだはしりも石津氏でした。1961年に登場した半袖の「ホンコンシャツ」は石津氏がどうにかして日本の夏場の蒸し暑さを和らげようとした結果だといいます。

 「VAN」ブランドを興した石津氏はファッションビジネスで「若者」という新市場を創造しました。今では信じられないかもしれませんが、60年代の若者はファッションにお金を費やすという習慣があまりなく、アパレル業界は若者を主なターゲットと見ていなかったのです。

 当時の男の子がお小遣いで買っていたのは主に本やレコードなど。自分の内側を磨くための投資がメーンでした。しかし、石津氏は「ブレザーにボタンダウン・シャツ」というファッションを「アイビールック」として提案。おしゃれのルールを知らなかった若者に着こなしのアイデアを提供することによって、おしゃれの欲求を引き出すことに成功しました。「需要は創り出すものだ」という現代のビジネス理論をはるか昔に実践していたわけです。

 ファッションをライフスタイル全般としてとらえたのも画期的でした。日本のキッチン雑貨店の草分け「オレンジハウス」を作ったのもそうした思いからでしょう。「VAN」卒業生向けに「Kent(ケント)」を打ち出したのも、「おしゃれは一生」という石津哲学からです。

 言葉を生み出し、広める天才でした。「Tシャツ」「カジュアル」「トラッド」「スタジャン」「スケボー」などはいずれも石津氏が広めた言葉だとされています。「キャンペーン」「プレミアム」といった広告・宣伝用語を持ち込んだのも石津氏だそうです。これらの言葉が存在しない状態を想像すれば、石津氏の功績の大きさが分かります。

 カジュアルウエア店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長の父は「VAN」ショップを経営していました。柳井会長がカジュアルウエアに親しむようになったきっかけも「VAN」でした。その意味では石津氏のDNAは形を変えて「ユニクロ」に引き継がれていると言えるかもしれません。

 「正統派」のファッションを定着させた石津氏は、ビジネスマンに脱スーツを促した「カジュアルフライデー」の提唱者でもあります。一生、ジェントルに生きることを進め続けた石津氏のメッセージは今後も忘れ去られることはないでしょう。

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