「ファッションの伊勢丹」として有名な百貨店、伊勢丹の秘密を探った本、『伊勢丹な人々』（日本経済新聞社刊）が出版されました。伊勢丹の歴史を振り返るのではなく、現場で働く人々に密着して、同社の魅力的な売り場づくりのノウハウに迫った内容です。

　バイヤーが自分で探してきた商品で売り場を構成する「自主編集」が同社の強みとされます。まだ無名だったデザイナーやブランドを１階の最も目立つ場所で紹介した「解放区」は今でも百貨店業界の伝説となっています。その「自主編集」を支えるバイヤーたちが主人公となっています。

　著者の川島蓉子（かわしま・ようこ）氏はファッション業界や消費トレンドの分析で定評があります。１９６１年新潟県生まれ。早稲田大学商学部卒、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。８４年から伊藤忠ファッションシステムでファッションを軸に消費文化を研究してきました。「繊研新聞」「日経ＭＪ」などのメディアに頻繁に原稿を寄せています。主な著書・共著に『おしゃれ消費トレンド』『ジャパニーズデザイナー』『ビームス戦略』などがあります。

　各章は「百貨店は人がつくる」「解放区ファッションデザイナーを育てる」「リ・スタイル　百貨店内にセレクトショップ」「BPQC　ワンフロアでライフスタイル提案」「ISETAN MEN'S」「イセタン・スピリッツ」から構成されています。章の建て方からして具体的で、「ファッションの伊勢丹」の仕掛け人たちの思考を掘り下げようという狙いがうかがえます。２１６ページ、１５７５円（税込み）。