英国の老舗ニットブランド「プリングル・スコットランド(Pringle of Scotland)」の主任デザイナー、スチュワート・ストックデール(Stuart Stockdale)氏が辞任しました。後任のデザイナーは未定です。ストックデール氏は2001年から同ブランドに参加し、ブランドのリニューアルを成功させた立役者でした。
「プリングル」は1815年創業の王室御用達ブランドです。ニットウエアの産地、スコットランドでロバート・プリングル氏が設立しました。スコットランドのカシミヤニットを代表するブランドです。今年で190周年を迎えました。
2000年に香港の衣料品メーカー、ファング・ブラザース・ニッティング(S.C. Fang & Sons)が同社を買収し、キム・ウィンサー(Kim Winser)最高経営責任者(CEO)の指揮下で、ブランド再生がスタートしました。古いイメージを脱ぎ捨てた新デザインを生み出す原動力となったのがストックデール氏です。モデルのハイジ・クラム(Heidi Klum)やソフィー・ダール(Sophie Dahl)を起用したのもストックデール氏でした。
2001年春夏のロンドンコレクションで、新ラインが打ち出され、注目を浴びました。サッカー界のスーパースター、デビッド・ベッカムとヴィクトリア夫人も新生「プリングル」のファンだそうです。米国女優のジュリア・ロバーツや歌手のマドンナも「プリングル」を着ています。1940年代にハリウッド女優たちのあこがれだった同ブランドは再びその栄光を取り戻しつつあります。
前足を挙げて立ち上がった獅子の紋章で有名です。アーガイル(菱形がつながった格子柄)模様を編み込んだニットでも知られています。アーガイル柄を靴下以外のセーターやカーディガンに使ったのは、「プリングル」が初めてだといわれます。カシミヤのニットや、ニットのアンサンブルを初めて採り入れたのも「プリングル」だそうです。
英国人のストックデール氏はロンドンのファッションの名門校、セントラル・セント・マーティンズ美術学校とロイヤルカレッジ・オブ・アートを卒業した俊英。「ロメオ・ジリ」「J・クルー」「ジャスパー・コンラン」などのブランドで経験を積みました。
クラシックなラインの「グレーラベル」、モダンなラインの「レッドラベル」という2ラインで展開しています。ライセンス事業を打ち切って、インポートへ切り替える方向で、ブランドイメージのアップに成功しています。日本では輸入商社のサン・フレールが独占輸入契約を結んでいます。
仕掛け人のウィンサーCEOは英国の小売り大手、マークス・アンド・スペンサー(M&S)でただ一人の女性ディレクターでした。2000年にM&Sから引き抜かれ、わずか6カ月でブランド再生を実現しました。
創業家は1960年代後半に同社をニットメーカーである英国のドーソン・グループに売却しました。プロゴルファーのニック・ファルドを起用してスポーツウエアとしてのイメージを強化した結果、「プリングル=ゴルフウエア」のイメージが広まり、半面、かつてのファッション性は薄まっていきました。しかし、ストックデール氏のアイデアで見事にファッションブランドとしてよみがえり、2005年秋冬からはロンドンからミラノへ発表の場を移しています。
ストックデール氏はまだ36歳という若さだけに、次にどこのブランドを手がけるのかが注目されます。同時に、敏腕経営者のウィンサー氏が誰にこの先の「プリングル」を任せるのかも気になるところです。
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