1920〜30年代に世界に広まった美術・装飾様式「アール・デコ」を回顧する大規模な展覧会「アール・デコ展 きらめくモダンの夢」が東京・上野の東京都美術館で始まりました。直線を多用する幾何学模様を特徴の一つとするアール・デコはファッションに与えた影響が大きく、今なお多くのデザイナーの着想の源泉となっています。
「アール・デコ」とは、20年代のパリを中心に開花した装飾様式。工業化や大量生産を背景に、直線的で華麗なスタイルを特徴としています。モダンな都市生活の始まりを受けた、自由でのびのびとした雰囲気があります。見た目の特徴としては、直線を駆使した、単純で大胆なデザイン、絵柄で知られています。25年にパリで開催された「装飾美術と産業美術の万国博覧会(エクスポジシオン・アンテルナシオナル・アール・デコラティフ・エ・アンダストリアル・モデルヌ)」が語源です。
今回の展覧会では宝飾品ブランド「カルティエ(Cartier)」、ファッションブランド「シャネル(Chanel)」などの作品が展示されています。レディースウエアやジュエリーのほか、当時のスタイリッシュな男女を大胆に描いた、美貌の女性画家、タマラ・ド・レンピカの絵画、彫刻、工芸品など、様々なジャンルの作品約200点が集められています。ルネ・ラリックのガラス、陶器、家具なども紹介しています。「カルティエ」の宝飾品計11点は総額約8億円ともいわれています。
ファッションを積極的に取り上げていることで有名な、英国の「ヴィクトリア&アルバート美術館」が企画した展覧会「アール・デコ 1910―1939」がベースになっています。日本への影響といった日本独自の視点も加えられています。
当時、フランスでは百貨店が誕生し、現代につながる消費スタイルが芽生え始めていました。女性はボディーを締め付けていたコルセットからようやく解放され、「ファッション革命」が本格化する時期を迎えていました。
アール・デコのモードへの影響は今なお続いています。「フェンディ」は2002年秋冬・ミラノコレクションでアール・デコをモチーフとしました。「アナ・スイ」もアール・デコ感覚をしばしば作品に採り入れています。「プラダ」や「ヴェルサーチ」にもアール・デコの影響が見て取れます。
日本では1994年に「アール・デコの世界展――ファッションを中心として」が開催されています。今回は、アール・デコを総合的に掘り下げる本格的な展覧会としては日本ではほぼ10年ぶりとなります。東京での開催後は、福岡市美術館(7月10日〜9月4日)、大阪市のサントリーミュージアム[天保山](9月15日〜11月6日)に巡回します。
「アール・デコ展 きらめくモダンの夢」
場所 東京都美術館(東京・上野公園内)
会期 4月16日〜6月26日(月曜休、5月2日は開催)
URL http://event.yomiuri.co.jp/artdeco/index02.html
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