別格のすごみがありました。ウエディングドレスを普段着に採り入れるという超前衛的な発想で、川久保玲氏はモード界を驚嘆させました。
モデルは一人残らずウエディングドレス姿。長いレース付きヘッドピースをかぶったモデルの顔は白塗りです。両ほほだけにピエロのような黒いポイントメークを入れています。
薄クリーム色のジャケットは左右の丸襟の位置がアンバランス。左右の袖の長さも明らかに違っていて、服としては「壊れ」ています。打ち合わせもまっすぐではなく、湾曲しています。
しかも裾は左右がそろっておらず、へそ出しです。足首で裾をぎゅっと絞った共生地のパンツはダボダボ。ハイウエストの腰周りは細いひもで結んであるだけです。靴はズック靴風の白いスニーカー。こんな花嫁はありえません。
別のパンツセットでもパンツは不良高校生のように幅広で、裾はダブル。モデルはパンツのポケットに両手を突っ込んだまま、ふてぶてしくランウェイを歩きました。
このウエディングドレス・シリーズではスカートに複雑なティアードを配した作品や、スタンドカラー風の襟で超ショート丈のトップス、指先を完全に隠してしまうスーパーロング袖、片方の袖だけ生地を変えた作品など、とても紹介しきれないほどのバリエーションが惜しげもなく投入されました。まさに「これでもか」と言わんばかりです。
色の面でも挑発的な試みが続きました。ウエディングドレス調なのに黒を混ぜたり、ヘッドセットと靴を除いて黒一色にしたり、かぶりものの花を赤やピンク、あげくの果てには黒にしたり。いい意味での「やりたい放題」でした。
「リアルクローズ」の要素が強まり、クリエーションのパワーダウンが指摘された2005―2006年秋冬・パリコレクション。でも、川久保氏はたった一人でそんな批判を思い切り蹴り飛ばして見せました。
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「コム・デ・ギャルソン」
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