スイスのブランド「アクリス（Akris）」はクラシックで派手すぎないラインを提案していました。細身のパンツスーツをメーンに、丁寧な手仕事を感じさせる作品がそろっています。

　創業者の孫に当たる３代目の主任デザイナー、アルベルト・クリームラー（Albert Kriemler）氏はまだ２度目のパリ・コレクションながら、、ブランドの基本線からぶれない、抑えたエレガンスを大事にしたドレスやスーツを並べました。１９２２年の創業で、８０年以上の歴史を誇る同ブランドはベテラン技術者を大勢抱えているだけに、ダブルフェースの１枚仕立てや立体裁断の縫製などが随所に生かされています。

　色としては茶色がベース。濃さの異なるブラウンカラーを重ねた作品が目立ちました。モスグリーンのコートドレスでは細かいレースを全体に配していました。

　レモンイエローの襟なしダブルジャケットと揃いのパンツがキュートです。スエード風のコートパンツとジャケットのセットでは、ジャケットの袖先を切り開いています。ウエストは共革のベルトを正面からずらした位置で結んで留める工夫を見せました。

　日本を意識したわけではないのでしょうが、日本風の作品がいくつか見られました。着物風のカシュクールのロングジャケットはラグジュアリー感がたっぷり。日本風の花模様を大きくあしらったドレープ豊かなスカートも登場しました。

　ベルベットのパンツスーツは、輝きのあるメタリックブルー系のマニッシュなテイスト。袖先からシャツを２０センチ程もはみ出させる崩したアレンジが目を引きました。

　靴や小物ではスエード風のショート・ハイヒールブーツを押していました。上端を折り曲げて、くるぶし辺りにポイントを作っています。バッグでは共革の茶巾袋風ミニバッグを無造作につかむスタイルを提案していました。

　「アクリス」はスイス東部の小さな町、サンガレン（St. Gallen）でアリス・クリームラー・ショッホ（Alice Kriemler-Schoch）氏が創業しました。ブランド名は創業者の名前から取られています。１００％スイスで生産されており、丁寧な手仕事の確かさで知られています。クチュール仕立てのスーツやドレスは高い評価を受けています。

　水玉模様は創業当時からの同ブランドのトレードマークです。熟練の職人が数多く在籍しているのが強みで、ダブルフェースの１枚仕立ては同ブランドのもう一つの看板と言えます。デザインは全体にクラシックなスタイルです。

　最高のテキスタイルを使うことでも有名です。「コットンのダイアモンド」ともいわれるスイスコットンの高級品、シーアイランドコットン（海島綿）を生産するコシラン社を傘下に抱えています。

　４５年に創業者の息子のマックス・クリームラー氏が継ぎ、ブランドの基礎を固めました。現在は創業者の孫に当たるアルベルト・クリームラー氏がデザインを、弟のピーター・クリームラー氏が経営や生産を担当しています。９９年にはパリ・オートクチュール協会に加盟しました。同協会に加盟している、フランス以外の外国ブランドはわずかです。

　欧米では早くから上流階級に多くのファンを抱えています。顧客には女優のスーザン・サランドン（Susan Sarandon）や、モナコのモナコのカロリーヌ（キャロライン、Caroline）王女がいるそうです。

　２００５年春夏でパリコレにデビューしました。スイスのブランドがパリコレに登場するのは、きわめてまれです。ただ、欧米では既に知名度が高く、米国では高級百貨店のバーグドルフ・グッドマン（Bergdorf Goodman）、サックス・フィフス・アベニュー（Saks Fifth Avenue）、ニーマン・マーカス（Neiman Marcus）などで販売されています。

　日本では２００２年に設立された日本法人のアクリスジャパンが主に取り扱っています。１９９６年にスタートしたセカンドライン「アクリス・プント（Akris punto）」も展開しています。東京・銀座の並木通りに路面店が２０００年、オープンしました。伊勢丹新宿店、高島屋横浜店などでも取り扱っています。

［関連リンク］
・「アクリス」の公式サイト
http://www.akris.ch/