「グッチ（Gucci）」は３月８日、女性プレタポルテ（高級既製服）のデザイナーをこれまでのアレッサンドラ・ファッキネッティ（Alessandra Facchinetti）氏からフリーダ・ジャンニーニ（Frida Giannini）氏に交代させると発表しました。ファッキネッティ氏は前任者のトム・フォード（Tom Ford）氏から引き継いでわずか２シーズンで「グッチ」を去ることになりました。

　わずか２週間前に2005―2006年秋冬ミラノ・コレクションで最新作を発表したばかりであり、顧客が不快感を感じるのは避けられないでしょう。フォード氏が離れた際には「フォードファン」の顧客が愛想を尽かしたと思われますが、今回はメゾン経営者サイドの経営方針に愛想を尽かす顧客が続出するおそれがあります。

　後任のジャンニーニ氏が手がけるアクセサリー部門は比較的成功を収めており、今回のレディースウエア部門への起用はアクセサリー的要素や皮革製品を強化していこうとする経営方針の表れかもしれません。アクセサリー部門のデザイナーは兼務するそうです。メンズのジョン・レイ（John Ray）氏は変更ありません。

　ジャンニーニ氏には競合ブランドの「フェンディ（Fendi）」が獲得に動くという憶測も流れていて、引き留めのために先手を打ったのではないかともみられています。同氏は「グッチ」の前に「フェンディ」で働いた経験があるそうです。

　「フェンディ」は、「グッチ」陣営とライバル関係にあるLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン傘下であり、花形デザイナーをライバルに引き抜かれてはたまらないという気持ちが「グッチ」経営陣を焦らせたとしても不思議ではないでしょう。「グッチ」は、百貨店「プランタン」や「イヴ・サンローラン」を抱える、フランスの流通大手、ピノー・プランタン・グループ（ＰＰＲ）の傘下企業です。

　公式発表は、ファッキネッティ氏が「グッチ」を離れる理由について「disagreement with management.（経営方針の不一致）」という表現しかしていません。ただ、フォード氏をサポートしてきたファッキネッティ氏が、フォード氏を追い出した現在の経営陣と対立しやすい立場にあったことは想像に難くありません。