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  (3/10) 2005―2006年秋冬パリ・コレクション解説 「アンダーカバー(Undercover)」

 フェルト素材を切り貼りし、だまし絵効果を採り入れた作品が見所です。小学校の図画工作のような奔放な発想が持ち込まれた、今回のパリ・コレクションで指折りの楽しいショーとなりました。

 薄いクリーム色のシャツを第2ボタンまではずし、パンツの上に出し、袖まくりという、一見、サラリーマン風の意表を突くスタイルで、のっけからサプライズを与えました。さらに黒っぽいストライプのベストを羽織っているように見えますが、これはまやかし。シャツの生地に接着剤でくっついて1枚になっています。ストライプのパンツを組み合わせて、かなりマニッシュなラインに仕上げています。

 どこから袖が付いているのか分からない仕掛けや、左右の身頃が素直にマッチしない重ね着など、オランダの画家、M・C・エッシャーの「だまし絵(トロンプ・ルイユ、trompe l'oeil)」を思わせるトリッキーな企みが作品のあちこちが忍び込ませてあります。

 Tシャツにはネックレスをプリント。ジャケットには実際には存在しないボタンを型押ししてあります。2003年春夏シーズンからパリコレに参加している高橋盾(たかはし・じゅん)氏はもう観客を手玉に取る術を心得ているようです。

 襟なしのメンズライク・ジャケットに黒の革手袋という精悍な出で立ちを押してきました。ボトムはストライプパンツやクラッシュドテニムなどを提案しています。両足を開いて突っ立ったモデルはまるでウエスタンのガンマン。目つきもにらみつけるようです。

 確実に足が2本入る超幅広パンツは田舎の不良高校生風。ファーのスカートの下にスリムパンツ、靴はバレエシューズという異色の取り合わせもチャレンジングです。

 前立てにゴージャスなフリルをあしらったグレー系のブラウスに、共生地のサスペンダー付きパンツというマッチングはきわどい線。肩出しドレスに、ギャング風のボルサリーノ帽も危うい組み合わせでした。

 膝辺りに意図的に異常なたるみを持たせたパンツや、共生地を首周りに余らせ、ケープ風にボリュームを出したジャケットなど、「余剰」を演出したアイデアが冴えていました。幅15センチほどの帯を斜めに貼り付けたり、裾に垂らしたりという、テープ遊びも目を楽しませてくれます。

 首から胸まで葉っぱで埋め尽くしたようなショール風のトップスなど、「数の力」を生かしてボリューム感を出した作品が目に付きました。握り拳大の頭蓋骨(スカル)の黒いモチーフを100枚以上もボディ前面にぶら下げた演出はブラックでシュールな「アンダーカバー」らしさを感じさせます。

 靴はワークブーツが繰り返し登場しました。ストリートの匂いを忘れない「アンダーカバー」であろうとしているかのようでした。

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