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  (3/7) 2005―2006年秋冬ミラノ・コレクション解説 「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」

 ため息が出尽くしました。「ドルチェ&ガッバーナ」の秋冬はファー(毛皮)とゴールドのビッグウエーブ。「贅沢」を分かりやすく形にしたらこういうことになるんだろうなぁ、と変に納得してしまいました。

 ファーとクリスタル、光り物とのマッチングが冴えています。ひじまである長い手袋にはクリスタルをちりばめました。ゴールド主体のネックレスやイヤリングとファーをマッチさせ、一歩後ずさりしたくなるようなクラス感を立ちのぼらせています。

 上も下も、靴もバッグも帽子もファー。でも、素材や風合いはそれぞれ変えています。レア素材のアストラカン(子羊)を多用したのも、ファーが氾濫する最近のコレクションの中で少しでも違いを出そうという工夫の現れでしょう。

 単色でもさっとした表情になりがちのファーに、切り替えや染め色で表情を与えています。襟や前立て、ポケット周りだけファーの種類を変える工夫があちこちに見られました。ミニのベアショルダー・ファードレスは、重くなりがちなファーを軽くキュートに見せる熱意を感じさせます。

 組み合わせでも「ドルチェ&ガッバーナ」らしいアイデアがあふれていました。白地に斑点のある、ゴージャスなファーコートに、シースルーのピンクのインナー、クロップトのスリム・デニムを合わせる手口は、もう「芸」と呼ぶしかないでしょう。

 ロシアや中国の富裕層への売り込みを狙ったと思われる作品がミラノでもパリでも目に付きました。「ドルチェ&ガッバーナ」では胸から下に花びらの飾りを100個以上も縫い付け、色とりどりの花で埋め尽くしたドレスを披露。複雑なエンブロイダリー(刺繍)で全身を波打たせたような、見るからに豪奢(ごうしゃ)なドレスも投入し、ブランドイメージを高止まりさせるような演出を心がけていました。

 小物で今回、際立っていたのは帽子への毛皮・レザー使いです。ロシアの映画「ドクトル・ジバゴ」を思わせるような大きなファーの帽子が何度も登場しました。円筒形のファー帽子は頭がもう一つ入るほどの高さ。このところ、ビッグメゾンがこぞって市場としてのロシアを意識してか、ロシアンテイストの作品を送り出しています。ビジネス面でも目先の利く「ドルチェ&ガッバーナ」ペアもこのビジネスチャンスを逃す気はなさそうです。

 かぶり物ではキャスケットを押してきました。一般的なキャスケットよりもトップにふくらみを持たせています。つばは片方の端だけを折り曲げて変化を出しています。つばだけが光沢あるレザーで、残りはファーという「レザー&ファー」のキャスケットも見られました。

 1960年代のロンドンがイメージにあったそうです。繰り返し登場したツイードにその意識がうかがえます。ただ、単にツイードを用いるだけではなく、意外感のあるファーとの組み合わせで新しいツイードの世界を提示しています。

 グリッター感を前に押し出したアクセサリーは抜群の出来でした。ゴールドでくるんだ極彩色の宝玉が首筋に躍る、まさに「贅の極み」といった感じのネックレスが胸元を飾り立てていました。

 登山で使うカラビナ(片方が広がった楕円形の金属製の環)形のつなぎ金具、赤や緑に輝く宝石などをつなぎ合わせたネックレスは立体感たっぷり。直径数センチの大きな真珠玉を30個以上も連ねたネックレスもありました。肩まで届くロングイヤリングにもゴールドをふんだんに使っていました。

 靴ではピカピカツルツルのゴールドやシルバーのハイヒールが目に付きました。ヒールは太めです。ヒールやエッジに同系色のパイソンをあしらったモデルも色や素材を変えて、何度も現れました。ほぼ全面を埋め尽くすようにクリスタルを何十粒も並べた、ふくらはぎ丈の黒革ブーツも。

 アッパーで目を奪われたのは、ボタンの使い方です。センターからずらした位置に、1個の直径が10センチを超えるようなビッグボタンを5個も6個も並べる遊びには「ヤラレタ」と思いました。こぶしほどもあるジャイアントボタン1個でコートの前を留めるに到っては、もう降参。巨大ボタンをパイソンでくるむという仕掛けも見られました。

 最近のパイソン(ヘビ革)ブームの火付け役となった「ドルチェ&ガッバーナ」。今回もパイソンをあちこちに使っています。黒のレザーバッグは紺色のパイソンを四隅に配しました。黒のキャスケットでは黒のパイソン革をぐるっと1周めぐらせています。キャメルカラーのキャスケットではつばだけが同系色パイソン。ベルトのバックルの枠にパイソンを使うアイデアも。ファーとの相性にも挑戦。グレーのファーでは、前立てとポケット周りの部分だけに黒のパイソン革をあしらいました。

 バッグは「プラダ」への対抗心がうかがえました。レモンイエローのクロダイル調レザーバッグでは同じ素材でデザインの異なる10分の1大のミニバッグをチェーンでつないでアクセサリーにしていました。クロコ調のレザー片をチェーンで提げたり、「G」の字型のメタリック飾りをぶら下げたり。バッグに複数のアクセをじゃらじゃら付ける演出は先に「プラダ」が仕掛けて成功したもの。うがった見方かもしれませんが、あえて同じアイデアで挑んだところに、デニムに続いて、バッグ分野でブランドを確立したいという思いが感じられました。

 色では沈んだ紫、薄いクリームへの傾倒が見られました。演出面では米国女優のクロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)でスタートしたところに、新たなファッションイコンを求める気分が感じ取れます。かつて歌手・マドンナに支持されたのをきっかけに飛躍した同ブランドですが、米国市場で新たなイメージ作りの必要を感じているのかもしれません。

 最後にランウェイに現れた2人は、何カ所も穴を開けたデストロイドデニムをはじめ、上から下までまったくおそろいの格好。先に私生活での別離が報じられていますが、仕事の面ではこれまでと変わらない関係をアピールしているかのようでした。

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