フランスの老舗ブランド「ランバン（LANVIN）」のヤングアダルト・ラインに当たる「ランバン・オン・ブルー（LANVIN en Bleu）」が出店を加速しています。東京・表参道に２月25日、「ランバン・オン・ブルー」のメンズ商品をフルラインで取り扱う、国内初の路面店「ランバン・オン・ブルー表参道店」がオープンします。

　ブランドコンセプトは「シックで生意気」。伊藤忠商事系のアパレル商社のジョイックスコーポレーションがメンズを展開しています。同社は「ランバン」のほか、英国の「ポール・スミス」、米国の「スタンリー・ブラッカー」などのブランドを手がけています。

　「ランバン・オン・ブルー」のメンズの主なターゲットは20代後半〜30代前半と、「ランバン」に比べてずっと若い。コレクションラインとは別の値ごろ感のあるラインを展開し、「ランバン」ファンを広げる狙いがあります。

　「ランバン・オン・ブルー」は、経営再建中のカネボウのファッション子会社、カネボウ・サンディジェームが2004年秋冬からレディースを展開。イメージキャラクターに女優・山田優を起用し、今まで「ランバン」ブランドに手が届かなかった層を取り込むアプローチとして打ち出してきました。日本でのみの商品展開となります。

　「ランバン」ブランドは1889年、当時、23歳だった創業デザイナーのジャンヌ・ランバン氏が立ち上げました。小さな帽子のアトリエを開いたのが始まり。彼女が一人娘、マリー・ブランシュのために作った子供服が最初のヒット商品となり、やがてその母親たちのための服もデザインするようになりました。

　彼女はフラ・アンジェリコのフレスコ画「受胎告知」や教会のステンドグラスに使われた青に強く惹かれていたそうです。「ランバン」の定番カラー「ランバン・ブルー」の起源はここにあります。「ランバン・オン・ブルー」とは、フランス語で「ランバンの青」という意味で、この「ランバン」を象徴する色から命名されました。

　89年まで20年間にわたりメリル・ランバン氏が主任デザイナーを務めていました。メリル氏は、創業者のおいであるベルナール・ランバン氏の妻。しかし、赤字が続いていたため、英国のミッドランド銀行が資本参加。メリル氏はブランドを離れます。同行はジョルジオ・アルマーニ氏に後任を打診しましたが、断られてしまいました。

　フランスのジャンヌ・ランバン社は95年、フランスの化粧品メーカー大手、ロレアル社の傘下に入りました。「プラダ」でデザインディレクターを務めたクリスティーナ・オルティス氏を98年秋冬からレディース・プレタポルテ（高級既製服）のデザイナーに迎えました。 日本では日本法人、ランバンジャパンが展開しています。

　意外なところでは、オフィス向けのコーヒーサービス最大手のユニマットオフィスコと組んでフランス料理店「ルカフェブルー」を99年から展開。ジャンヌ・ランバン社側がフランスで培ったノウハウを提供しています。子会社のルカフェブルーはパリの「ランバン」本店内でもレストランを営業しています。バブル経済の絶頂にあった88年には、キャビア専門の高級レストラン「サロン・ランバン　キャビア・バー1988」を東京・原宿に開きました。

　レディースのデザイナーは2002年３月のパリ・コレクションからアルベール・エルバス氏に代わりました。エルバス氏は「イヴ・サンローラン　リヴ・ゴーシュ」や「クリツィア・トップ」などを任されてきた実力派です。

　モロッコのカサブランカ生まれのイスラエル育ち。現在は米国に腰を据えています。米国ブランドの「ジェフリー・ビーン」で経験を積んだ後、96年から「ギ・ラロッシュ」でプレタポルテの主任デザイナーを務めました。

　99年から「リヴ・ゴーシュ」を任されましたが、グッチグループが「イヴ・サンローラン」ブランドを買収したのに伴い、トム・フォード氏に後を譲り、３シーズンで「イヴ・サンローラン」を離れます。

　2001年秋冬からは「クリツィア・トップ」のデザイナーとなりますが、わずか１シーズンで同ブランドを去ることに。こうした「流転の日々」はエルバス氏の実力から考えて不運なキャリアと言えるかもしれません。そんな彼は今、「ランバン」で充実した仕事ぶりを見せています。

　ランバンジャパンは2004年、東京・銀座に大型路面店「ランバンブティック銀座店」をオープンしました。エルバス氏自身がディレクションを手がけた世界初のブティック。３フロアで構成され、３階ではセカンドラインの「ランバン・コレクション」も扱っています。