「ジェシカ・オグデン(Jessica Ogden)」はスポーツジャージを思わせるようなスエット風のパンツを前面に押し出してきました。「ダサかわ」の線を突くぎりぎりの仕掛けですが、きわどいバランスで成り立っています。色もくすんだピンクやオレンジなど、ゆるいカラーリング。あえて狙ったナイーブな温かみが「リアルクローズ」の波の中で際立って見えました。
スエット風のパンツは足首で絞ったデザイン。膝丈スカートの重ね着は、日本で女子高校生がよくする「埴輪(はにわ))」スタイルを連想させました。
リボンやボウタイがこのところ、さまざまなブランドでキーモチーフとなっています。「ジェシカ・オグデン」もボウタイのチェックブラウスに紺のオーバーオールパンツという組み合わせを提案。薄い茶色のワンピースに合わせた、マスタードカラーのボウタイと同色のパンツは上品なテイストを感じさせます。肩やウエストにアクセントとしてリボンを使ったツーピース・ドレスも発表しました。
柄ではチェック柄を多用していました。襟周りだけにチェック柄を配したブラウス、共布のチェック柄シャツとネクタイなど、一癖ある使い方を見せていました。
スモーキーなパステルカラーという微妙な色使いを打ち出しています。パステル調のモスグリーンやサーモンピンクを心持ちくすませて、落ち着きを生んでいました。
黒のミニドレスに、ももだけを露出させる膝上までの黒いレッグウォーマーを合わせたマッチングでは、わずかにのぞく太ももがかすかな色気を漂わせます。足首に細いベルトを回すハイヒールもクラシックな味わいがあります。
ジェシカ・オグデン氏はジャマイカ生まれの英国人。ロンドンのバイアン・ショー美術学校(Byan Shaw School of Art)で彫刻を学びました。
1993年に自分の名を冠したブランドをスタート。当初は、使い古したマットレス生地やアンティークの生地を素材に、一点物のドレスを仕立てるような「サルベージファッション(salvage fashion)」で注目を集めました。彫刻を学んだだけあって、現代彫刻のジャンクアートやアッサンブラージュの手法を採り入れたような仕掛けです。
近年、ヴィンテージのリメークは当たり前の手法となった感がありますが、オグデン氏はヴィンテージよりもさらに古いアンティークの布地を使います。物によっては、18世紀の布地であることも珍しくありません。
ファッションと彫刻、工芸をボーダーレスにミックスした取り組みを得意としています。素材感を重視し、テキスタイルの発掘にも熱心です。2002年からロンドン・コレクション(London Fashion Week)に参加しています。
アプローチは斬新ですが、作品はどこかノスタルジックなたたずまい。母親が娘のために作った服のような温かみがあります。クラシカルなテイストを持ち、着回しの融通性も十分です。
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