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  [ブランド名]
ソフィア・ココサラキ(Sophia Kokosalaki)

[解説]
 古代ギリシャの歴史を感じさせる、ドレープ(ひだ)使いの上手なブランドです。まだ30代前半のソフィア・ココサラキ氏は2004年、世界で最も多くの人にその作品を眺められたデザイナーでしょう。この年最大のスポーツイベントとなったアテネ夏季五輪で、彼女は開会式・閉会式の衣装を担当したからです。アイスランド出身の歌手・ビョークが開会式で着た光り輝くロングドレスもココサラキ氏の作品です。

 ココサラキ氏がファッション界の関心を集めているのは、アテネ五輪だけが理由ではありません。彼女は、フランスが誇る老舗メゾン「ジバンシィ(Givenchy)」のレディース部門デザイナーの有力候補となったのです。

 「ジバンシィ」では2004―2005年秋冬パリコレクションを最後に、これまでデザイナーを務めてきたジュリアン・マクドナルド氏が退任。ココサラキはザック・ポーセン氏、アイザック・ミズラヒ氏らとともに後任デザイナーの最終候補になりました。最終的には新デザイナーにリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)氏を起用されました。

 こうした事情を配慮してか、ココサラキ氏はこれまで作品発表の場としてきたロンドンを離れ、2005年春夏からパリコレクションにデビューしました。当日は「ジバンシィ」の重役のほかに、フランスの巨大ブランド企業、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのヘッドハンティング担当の幹部も客席に陣取っていたそうです。

、ココサラキ氏のデザインには、ギリシャの様式美が反映されています。その最もはっきりした特長は巧みなドレープに表れています。ギリシャ神話に登場する女神を思わせる流麗な布のひだやたわみは女性の身体の美しさを強調してくれます。

 ギリシャの歴史的遺産を大切にしながらも、古臭いイメージはありません。英国の名門、セントラル・セント・マーティンズ校(Central Saint Martins School of Fashion)でデザインを学んだ本格派だけあって、ロンドン流のヒップな感覚があちこちに見受けられます。

 もう一つの特長がファブリック。以前、デザイナーを務めていた、イタリアの有力皮革ブランド「ルッフォ・リサーチ(Ruffo Research)」で、ココサラキ氏はレザーをまるで布のように扱う術を身に着けました。レザーを編んで布地のように仕立て上げる技には驚かされます。レザーをひねったり、切り裂いたり、時にはしわや折り目をを付けて革の表情を変化させてくれます。

 多くのデザイナーは布と革を別々に扱いがちですが、彼女は布と革を巧みに組み合わせてファブリックにアクセントを与えるのが得意です。アップリケやパッチワークにもしばしば革がうまく採り入れられています。

 ドレープ処理やレザー使いには丹念な手仕事が必要になります。ココサラキ氏は「クラフトマンシップこそ、私が重んじるもの」と述べ、ハンドクラフトに対する至上の愛を認めています。ビョークのほかにも、米国歌手のカイリー・ミノーグ、ジェニファー・ロペス、コートニー・ラブ、女優のクロエ・セヴィニー、スーパーモデルのケイト・モスらが顧客。でも、ココサラキ氏は「プレミア上映会やチャリティイベントのための服じゃない」と宣言していて、セレブリティーだけのブランドになる気はないようです。

 おすすめのアイテムは、繊細なドレープやプリーツが施された「ココサラキ調」のドレス。シルクジャージーやシフォン、オーガンジー地のものが多いようです。切り裂いたシフォンを細い帯状にして複雑に立体交差させる工夫には脱帽。肌が見え隠れするように計算されたカッティングも素敵です。柔らかいコットンのブラウスやスカートはドレスよりも値段がぐっと手頃。近年はパールピンクや水色、グリーンなどの初々しい色使いが目立っていましたが、最近は黒系が増え、さらに洗練度が高まっています。

 1着持っていれば、ここぞというときに何度も使えそうです。日本ではまだ知名度があまり高くありませんが、世界のファッショニスタの見方は「今が買い時」。アテネ五輪の余韻が残る今のうちに手に入れておけば、ちょっとした話題にもなるでしょう。

●ブランドデータ


[本国]
生まれはギリシャ


[経営・日本での展開]
 日本ではまだ単独のショップはなく、セレクトショップでの展開。福岡市・大名のセレクトショップ「carrello」が力を入れて取り扱ってきた。

[歴史]
 ソフィア・ココサラキ氏は1972年ギリシャ・アテネ生まれ。ギリシャ文学などを学んだアテネ大学を95年に卒業。手作りでドレスを作り始めた。彼女のハンドクラフトへの傾倒には、マクラメ編みの名人だった祖母の影響があるという。

 98年にセントラル・セント・マーティンズ校で修士号を取得。自らの名前を冠したブランドを立ち上げた。2000年春夏からロンドンコレクションでデビュー。

 2001年から1年間、イタリアの皮革ブランド「ルッフォ・リサーチ」のレディース部門のデザインを担当。「ルッフォ」は、66年、創業者のルッフォ・コルシ氏がイタリアに開いた高級皮革店から始まったレザー製品専門のブランド。「ルッフォ・リサーチ」は、「ルッフォ」が比較的新進のデザイナーを起用して手がけるもう一つのブランドだ。

 「ルッフォ・リサーチ」は、ジョン・ガリアーノ氏らのアシスタントだったアントニオ・ベラルディ(Antonio Berardi)氏を97年にデザイナーに起用。99年にはヴェロニク・ブランキーノ氏とラフ・シモンズ氏を使って話題を呼んだ。2000年にはAF ヴァンデヴォルスト(AF Vandervorst)氏、2001年にはココサラキ氏がデザイナーを務めた。2003年春夏からはコロンビア生まれのフランス人デザイナー、ハイダー・アッカーマン氏がデザイナー。

 2003年の英国スタイルアワードでは「英国デザイナーオブ・ザ・イヤー」をアレキサンダー・マックイーン氏が、最優秀新人デザイナーをココサラキ氏が受賞した。このころ、既にロンドンコレクションでは彼女の作品がマスコミの大きな関心事となり、「マックイーンの次の世代」の旗手として評価が高まっていった。

 2004年アテネ夏季五輪では開会式・閉会式の公式衣装をデザイン。数千着ともいわれる衣装を考案する大仕事だった。これまでギリシャは世界のファッションシーンでは比較的目立たない存在だったたが、アテネ五輪はギリシャ出身の彼女を一気に世界の有名デザイナーの仲間入りさせた。

 ココサラキ氏は「ジバンシィ」の次期デザイナーとして最終選考に残り、世界のファッションジャーナリストの耳目を集めた。かつてLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン傘下のスペインブランド「ロエベ(LOEWE)」でナルシソ・ロドリゲス氏がデザイナーを降りる際も後任に名前が挙がったとされる。「ロエベ」は2002―2003年秋冬から26歳のスペイン人、ホセ・エンリケ・オナ・セルファ(Jose Enrique Ona Selfa)氏がデザイナーに就任。ココサラキ氏は2005年春夏からはパリコレクションに参加するようになった。

[現在のデザイナー]
ソフィア・ココサラキ氏


[キーワード]
ギリシャ、様式美、官能的、レザー


[魅力、特徴]
 アテネの丘に立つパルテノン神殿の柱を思わせる造形美にうっとりします。そして呆れるほどの巧緻(こうち)な手仕事。優美さとりりしさが共存していて、着る人を聡明なイメージに包んでくれます。

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