[解説]
「世界で一番美しいプリント」とも評される、華やかなプリント柄で有名な老舗ブランドです。日本では40代以上の根強い固定ファンを持つアッパーブランドとしてお馴染みですが、2001年にフランス人の夫婦デザイナーユニット「E2(ウー・ドゥー)」をデザイナーに起用し、ファン層拡大に成功しました。
「E2」はミシェル(Michele)とオリビエ(Olivier)のシャトネ(Chatenet)夫妻。ヴィンテージ服を解体したりリメークして新しい作品を生み出す「E2」には、歌手のマドンナや女優のグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)、キャメロン・ディアスらのファンが付いています。
「レオナール」ブランドを長年、率いてきたのは、チーフデザイナーを兼ねてきたダニエル・トリブイアール(Daniel Tribouillard)社長。ニットにプリントする画期的な技法を開発、「花のレオナール」の評価を確立しました。
「レオナール」では蘭やバラ、アサガオなどの花柄が代表的なモチーフとされていますが、近年はペイズリー柄やアニマル柄、幾何学模様、サイケデリックモチーフなど、新しいプリントを打ち出しています。2003―2004年秋冬ではポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルの代表作「フラワー」シリーズ風の花柄も登場しました。
プリント物では異例ともいえる30以上の色を、職人の手で1色ずつ重ねていくシルクスクリーンというプリント手法が「レオナール」のお家芸。社長が自ら世界各国を旅して集めたモチーフが素材になります。2003年夏以降、目立つのが、「和」をモチーフにしたプリントです。花や雲などの着物柄をワンピースにあしらっています。
大輪の花をドラマチックに配するなど、大胆なプリント使いを得意とするせいか、フォルムはシンプル。ボディシルエットをエレガントに表現するシルクジャージー素材が定番ですが、最近はストレッチ素材をはじめとする新素材も増えています。
日本ではマチュア(熟年)層に確固たる支持者を抱えています。新作が入荷すると、すぐに長年のファンが買い占めてしまうほどだそうです。
日本で黒を基調にしたファッションが流行した80年代末以降は「オバさんブランド」というレッテルを貼られてしまいましたが、米同時テロ以降、花柄プリントや明るい色使いが復活する中、「レオナール」も再評価のチャンスを得たようです。セレクトショップの雄、ユナイテッドアローズでもインポート物の取り扱いが始まりました。
日本との関わりは深く、三共生興が長年、国内販売を手がけてきました。フランス本社は日本を特に重要なマーケットと見ているようです。
2004―2005年秋冬パリコレクションではベルギー人デザイナーのヴェロニク・ルロワ(Veronique Leroy)が初めてデザインを手がけました。ルロワはアズディン・アライア(Azzedine Alaia)やマルティーヌ・シットボン(Martine Sitbon)の下でキャリアを積み、91年に自分の名前を付けたブランドを立ち上げています。シャープなフォルムやシンプルなカッティングに冴えを見せるルロワの「レオナール」はこれまでよりもぐっとシックに。創業から60年を迎えた老舗ブランドは新たな変革の時を迎えつつあるようです。
●ブランドデータ
[本国] フランス(パリ)
[経営・日本での展開] 繊維商社の三共生興が1969年に「レオナール」ブランドを導入し、日本での展開を手がけています。国内ではレディースの「レオナール・ファッション」、スポーティラインの「レオナール・スポーツ」、メンズの「レオナール・オム」の3ラインで構成。
三共生興は「レオナール」のほかに、英国の老舗アパレルブランド「ダックス(DAKS)」や、フランスのファッションブランド「クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)」、米国の「ニコル・ミラー(Nicole Miller.)」などを展開。91年には英国の本家、ダックス・シンプソン社を買収。「ダックス」ブランドを手に入れた。
三共生興は63年から「ラコステ」ブランドを扱ってきたが、85年にフランス本社の方針転換で権利を失った。この教訓がダックス社買収の背景にあったようだ。
「レオナール」ブランドの現在の課題はデザインが若返ったのを追い風に、これまでよりも若い年齢層の顧客を開拓することだ。若いファンの獲得に向けては思い切ったイメージ戦略が求められそうだ。
[歴史]
1943年にパリでジャック・レオナール(Jacques Leonard)氏がニット工房を設立したのが始まり。フランスのリヨンでテキスタイルへのプリント技法を学んだダニエル・トリブイアール氏が社長兼チーフデザイナーとして迎えられ、58年、「レオナール」ブランドを創業。ブランド名は創業者であるレオナール氏のファーストネームに由来する。創業時の目標は「世界一美しい花、蘭を、最高の生地である絹の上にプリントすること」だったという。
伸縮性のある生地の上へのプリントが困難とされた時代に、「レオナール」はニットへのプリント技術を開発。不可能を可能にした技術は欧州のファッション関係者の間で高く評価された。さらに技術に磨きをかけ、プリント柄のプルオーバー・セーターを実現。69年にシルクジャージへの多色プリント技術を確立した。今でも看板デザインとなっている花柄が相次いで発表され、「花のレオナール」として有名になった。
92年、メンズコレクションを発表。94年、フランス・オートクチュール協会に加盟。
2001年に夫婦ユニット「E2」をデザイナーに起用。2004―2005年秋冬からはヴェロニク・ルロワ氏がデザインを担当。
[現在のデザイナー] ヴェロニク・ルロワ氏
[キーワード] 花柄、シルクジャージー、ニット、プリント
[魅力、特徴] ヴィンテージブームの中、「レオナール」のレトロモダンなプリント柄は「エミリオ・プッチ」の「プッチ柄」同様、見直されています。なかでも大ぶりの花のプリントのインパクトはさすが。年配の方のような一枚使いを避けて、わざと大きめのアクセサリーやパンツ、デニムなどと合わせると、野暮ったくならずに済みます。
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