[解説]
フセイン・チャラヤン((Hussein Chalayan)氏は「静と動」の二極性を意識したコンセプチュアル(哲学的)な作風で知られています。建築や哲学など幅広い視野を持ち、ファッションとアートの境界線を縫うようなスタイルで高い評価を得ています。
2003年春夏ではドレスの中央をくり抜いて、中からバリエーション豊かな生地がはみ出してくる重層的な作品を発表しました。アバンギャルドな作品がクローズアップされがちですが、基本的には過剰な装飾を排したミニマルでシンプルなフォルムを得意としています。
色も無機的な色を好んで使います。ニットと布帛(ふはく)という異素材を複雑に重ねる手法で知られています。
2005―2006年秋冬・パリコレクションでパリデビュー10周年を迎えました。このコレクションでは「リアルクローズ」に振れました。黒、グレー、白の無機的な色をベースにしています。
●ブランドデータ
[本国]
母国はキプロス。ロンドンで学び、コレクションデビューしたが、現在はパリを発表の場としている。
[経営・日本での展開]
オンワード樫山の子会社で、セレクトショップ「ヴィア・バスストップ」を展開するバスストップは2004年春夏から「フセイン・チャラヤン」の輸入販売を開始。同年4月、初の路面店を東京・代官山にオープンした。2005年春夏からはディフュージョンライン「チャラヤン」の販売を開始した。
89年にニューヨークでデビューした「セイ(TSE)」は98年秋冬から3年間、チャラヤン氏を「セイ・ニューヨーク(TSE New York)」ブランドのデザイナーに起用した。英国王室御用達の宝飾老舗ブランド「アスプレイ(Asprey)」のファッション部門のクリエイティブディレクターを任されている。
99年、2000年と、2年連続で「ブリティッシュ・デザイナー・オブ・ジ・イヤー」を受賞した。94年からロンドンで新作を発表してきましたが、2002年春夏からパリコレクションに発表の場を移した。作品の評価とは裏腹にビジネス面での成功を収められない状態が続いていたが、イタリアのジボ・コー(GIBO CO.、フィレンツェ)の支援を受けてパリコレ進出を果たした。同社はオンワードの子会社。
[歴史]
フセイン・チャラヤン氏は1970年、地中海に浮かぶ島国、キプロスの首都、ニコシアで生まれた。ロンドンにあるファッションの名門校、セントラル・セント・マーティンズ校(Central Saint Martins School of Fashion)を93年に卒業。卒業作品はロンドンの有名セレクトショップ「ブラウンズ」が買い取りました。翌94年に自分の名前を冠したブランドを立ち上げた。2002年春夏からパリコレクションに参加している。
キプロスの数奇な運命はチャラヤン氏の作品世界に大きな影響を与えている。キプロス島は60年、英国から独立した。しかし、チャラヤン氏が4歳の74年、 トルコ軍がキプロスに侵攻。主にキリスト教を信仰するギリシャ系住民と、イスラム教を信じるトルコ系住民に分裂した。チャラヤン氏自身はトルコ系。
12歳で渡英した。英国に移住して長い。ロンドンに暮らし、イタリアで作品を作り、会社があるのはニューヨーク。米国の有力ニュース誌「タイム」のアジア版は2000年、次世代を担うリーダーを選ぶ企画「革新者」のデザイナー部門にチャラヤン氏を選んだ。
[現在のデザイナー]
フセイン・チャラヤン氏
[キーワード]
シンプル、ミニマル、コンセプチュアル、「アートファッション」、キプロス
[魅力、特徴]
ファッションとアートの両方を楽しめるブランドと言えます。それでいてデザイン自体は優しい印象。名前を出して感心してもらえるデザイナーの一人でしょう。
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