[解説]
大人のかわいらしさを演出するロマンチックなブランドです。ファーの襟付きニットカーディガンに象徴される、少女性とセクシーさが共存するフェミニンな味わいが持ち味です。
プレタポルテの「ブルマリン」のほかに、セカンドラインの「BLUGIRL(ブルーガール)」、フラッグシッップ・ブランドの「アンナ・モリナーリ(ANNA MOLINARI)」があります。「ブルマリン」「ブルーガール」は創業デザイナーのアンナ・モリナーリ氏自身が、「アンナ・モリナーリ」は1998年春夏ミラノコレクションから、実の娘であるロッセッラ・タラビーニ・モリナーリ(Rossela Tarabini Molinari)氏がデザイナーを引き継ぎました。
アンナ・モリナーリ(Anna Molinari)氏がデザインする2ブランドに共通するのが、飾りすぎないエレガンスの微妙なさじ加減。ゴージャスでグラマラスではあるのですが、決していやらしくない。情熱を内に秘めた女性の複雑さを、官能的なシルエットに映し出しています。
「ブルマリン」はニットカーディガンやシフォンドレスに代表される、ソフトな風合いのアイテムに人気があります。アンナはもともとニットからスタートしています。ニット工場を経営する両親に育てられたこともあってか、特にニットへの思い入れが強いようです。
フリルやレースといったディテールにも、アンナの「女性なるもの」への憧れが感じ取れます。シフォンやモスリンなどの柔らかい布を重ねた、天女の羽衣を思わせるレイヤードスタイルは、いくつになっても夢がちな女性の心理を表現しているかのようです。
「ブルマリン」というブランド名には「青」と「海」に対するデザイナーの思いが込められています。そのシンボルカラーともいえるスカイブルーや、ターコイズブルー、ベビーピンク、赤などがフェイバリットカラーのようです。花やフルーツのプリントがよく使われ、デザイナー自身が大好きだというバラの花のモチーフも有名です。ショップのディスプレーにも赤いバラが使われています。彼女の私邸では広大な庭園に自慢のバラの花が咲き誇っているそうです。
カジュアルライン「ブルーガール」はパステルカラーなどを駆使した、ハッピーで陽気なコレクション。キュートでチャーミングな甘さがポイントです。ミドルティーン以上の比較的若い女性がターゲットですが、幅広い層から支持されています。かすかに漂うノスタルジックな雰囲気が理由でしょうか。
一方、「アンナ・モリナーリ」は黒をベースにした硬質なラインを提案しています。ハードでデコラティヴなデザインは母の2ブランドとはあまり共通性がありません。実際、アンナは「デザイナーとしてお互いの立場を尊重し、干渉しないようにしている」そうです。
「アンナ・モリナーリ」はキュートなのにアバンギャルドな、一見矛盾するような感覚が魅力です。ロッセッラはロック音楽から着想することが多く、「Sex Drug Rock'n Roll」を唱え、ドラッグの過剰摂取で命を落とした伝説の女性ロック歌手、ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)をモチーフにしたコレクションを発表しています。
一見、対照的なラインに見える母娘ですが、娘が時代の先端を走ってコアなファンを開拓し、ボリュームゾーンを母がしっかりとキャッチするというトータルなブランド戦略が読み取れます。夫と共にブランドを立ち上げ、娘と息子の両方がデザイナーとして事業に関わるという典型的な家族経営は、それ自体がアンナの思い描く「夢のかたち」とも言えそうです。
●ブランドデータ
[本国] イタリア(ミラノ)
[経営・日本での展開]
日本では輸入商社のブルーベルジャパンが「ブルマリン」「ブルーガール)」「アンナ・モリナーリ」の3ブランドを展開。商標上の問題から、日本では「ブルマリン」を「Blumarine/ANNA MOLINARI(「ブルマリン/アンナ・モリナーリ」)として、「アンナ・モリナーリ」を「ANNA MOLINARI COUTURE(アンナ・モリナーリ クチュール)」として展開している。
ブルーベルは「ナルシソ・ロドリゲス(narciso rodriguez)」「アントニオ ベラルディ(ANTONIO BERARDI)」「モスキーノ(Moschino)」などのブランドを手がける。ベルギー人のオリビエ・ティスケンス氏が2003年からデザイナーとなり、ブランド再生に成功した、フランスを代表する高級レディースブランド「ロシャス(Rochas)」の販売権も獲得した。
ブルーベルは東京・表参道の骨董通りに「ブルマリン/アンナモリナーリ」など3ブランドを集めたショップ「アンナモリナーリ青山店」を開いた。2003年1月にいったん閉店した旧ショップの2軒隣りに再オープンした。
[歴史]
アンナ・モリナーリ(Anna Molinari)氏の両親はイタリアで大きなニット工場を経営しており、幼いころから母に縫製のテクニックを教え込まれた。ニットに囲まれて育った彼女は自然にファッション業界に進んだ。
両親の会社で経験を積んだ後、彼女の夫、ジャン・パオロ・タラビーニ(Gianpaolo Tarabini)氏と77年、会社を立ち上げる。当初は、家業でもあったニットから事業をスタートした。
80年に「ブルマリン」コレクションを発表。87年、ミラノコレクションに初参加。95年には自らの名前を冠した高級ラインとして「アンナ・モリナーリ」ブランドをスタート。セカンドラインの「ブルーガール」、メンズラインも発表した。98年春夏からは長女のロッセッラ・タラビーニ・モリナーリ氏に「アンナ・モリナーリ」のデザイナーを譲った。息子のジャングイド(Gianguido)氏はメンズのデザインを担当している。
ロッセッラ氏は69年、イタリア北部の小都市、カルピで生まれた。ファッション誌「ヴォーグ(VOGUE)」イタリア版で編集者として働いた後、母のブランドに参加。98年から「アンナ・モリナーリ」のデザイナーを引き継いだ。
[現在のデザイナー] アンナ・モリナーリ氏(「ブルマリン(日本では「ブルマリン/アンナモリナーリ」)」「ブルーガール」)、ロッセラ・タラビーニ・モリナーリ氏(「アンナ・モリナーリ」)
[キーワード] フェミニン、ロマンチック、エレガンス、ニット
[魅力、特徴] 重宝するのはカーディガン。キャミソールなどの上にちょっと羽織るのに便利。レースやフリルがあしらわれ、花柄プリントがよく使われますが、決して子供っぽくないのが不思議。普段着としても使えます。
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