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  [ブランド名]
アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)

[解説]
 英国を代表するアバンギャルドなブランドです。「背広」の語源になったともいわれる、カスタム仕立てスーツのメッカ、ロンドンのサビル・ロウ(Savil Row)地区で修業しただけあって、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)氏のテイラーリングの技術は一流デザイナーの中でも抜群です。

 1996年からフランスの老舗メゾン「ジバンシィ(Givenchy)」の主任デザイナーを務め、知名度を上げました。オートクチュールっぽくてゴージャスでありつつ、挑発的でエッジィなデザインには、一目でそれと分かる切れ味があります。

 「アバンギャルド」という言葉はファッション界ではいささか軽々しく使われすぎているきらいがありますが、マックイーン氏こそ、その形容にふさわしい現役デザイナーと言えるでしょう。時として過剰とすら映るその攻撃性と、スキンヘッドにタトゥーといった外見などから、彼は「バッドボーイ(悪童)」「アンファン・テリブル(恐るべき子供たち)」などと、メディアから呼ばれてきました。

 既成のファッションシステムを突き崩そうとするマックイーン氏のスピリットの根っこは彼の生い立ちにあります。ロンドンの下町、イースト・エンドにタクシー運転手の息子として生まれた彼はストリートの息づかいやパンクロックに通じる反骨・反体制精神を制作の原動力としています。「英国のがんは根深い階級制度にある。常に下から上を突き上げていきたい」と公言するマックイーン氏は「ジバンシィ」のデザイナーに就いた後もスタイルを変えず、「ジバンシィ」側と衝突したほどです。

 前から見るとスカートだが、後ろは七分丈のパンツというデザインや、アシメトリー(非対称)のジャケットなど、いわゆる「テイラード崩し」が有名です。「"崩し"を手掛ける資格があるのは、テイラーリングをマスターした者だけ」と言い切るマックイーン氏はサビル・ロウで叩き込まれた技術を、既成デザインの破壊と解体に生かし、古いファッション界に後ろ足で砂を掛けているかのようです。

 2005年春夏パリ・コレクションではモデルをチェスのコマに見立てたショーを披露。スクールガール風の制服ルックや、ジャポニズ風、アメリカンフットボール風コスチュームなどを提案し、引き出しの多さを証明して見せました。2004年秋冬パリコレでは宇宙服を思わせるアンドロジニアス(両性具有)的なデザインを発表。2004年春夏パリでは「ダンス」を味付けに使い、モデルをダイナミックに動き回らせました。ダンスを通して、自慢の仕立ての確かさを印象付けるという心憎い演出でした。

 シルクのワーキングパンツ(作業ズボン)はマックイーン氏らしさが表れた作品といえるでしょう。上流階級の象徴である絹という素材と、労働者階級の代名詞ともいえる作業服を組み合わせたところに、ファッションと階級闘争を結び付けようという彼のしたたかな思惑が見て取れます。フリルや刺繍などのロマンチックな素材と革やデニムといったハードなマテリアルを組み合わせたパンキッシュな作品もマックイーン流です。

 ショッキングな演出で名を馳せたマックイーン氏ですが、近年はシックで優雅な作品が増えてきた感があります。世界最大のカットクリスタルメーカーであるスワロフスキー社(オーストリア)のクリスタルをファッションデザインに採り入れる流れを作ったのもマックイーンらでした。「ジバンシィ」を経験して、成熟した大人の女性を意識するようになったのかもしれません。

 肩のラインにアクセントを置き、ウエストをぐっとしぼった逆三角形デザインで知られていましたが、よく見ると、着やすいフェミニンなラインも発表しています。グッチ・グループに入り、資金的な安定を得た今、マックイーン氏の「服飾革命」は一般大衆への浸透を目指す新たなステージに移ったようです。

●ブランドデータ


[本国]
英国(ロンドン)


[経営・日本での展開]
 イタリアのブランド大手、グッチ・グループ傘下。グッチ・グループにはほかに「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」「ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)」「セルジオ・ロッシ(Sergio Rossi)」、宝飾メーカーの「ブシュロン(Boucheron)」、皮革製品の「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」などがある。グッチ・グループの日本での持ち株会社は「グッチ・グループ・ホールディング・ジャパン」。

 アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)氏がまだ駆け出しだったころの1992年から、日本ではセレクトショップのザ・ギンザが取り扱ってきた。96年春夏物以降はオンワード樫山グループのセレクトショップ運営会社、バスストップが独占輸入販売権を得て、セレクトショップ「ヴィア・バスストップ」で販売してきた。

 グッチ・グループは2000年、マックイーン氏の個人ブランド運営会社の株式の51%を取得した。同氏はこの時点では、フランスのブランド大手、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループの傘下にある、フランスの老舗ブランド「ジバンシィ」の主任デザイナーだったが、「ジバンシィ」は2001年10月の契約切れをもって、同氏との縁を切った。  グッチとLVMHはライバル関係にあるため、「敵側」に回った同氏を「ジバンシィ」側が嫌ったとみられる。この引き抜き劇は近年のブランド争奪競争を象徴する出来後として知られる。

[歴史]
 アレキサンダー・マックイーン氏は1969年、ロンドンの下町、イースト・エンド(East End)でタクシー運転手の家に6人兄弟の末っ子として生まれた。本名は「Lee McQueen」。ファッション界に入るに当たって、「Alexander McQueen」と名乗る。

 ロンドンの上流階級向けオーダーメード紳士服の街、サビル・ロウにあり、チャールズ英皇太子を顧客に持つ老舗「アンダーソン・アンド・シェパード(Anderson and Shephard)」に16歳で入る。その後、同じくサビル・ロウにある、英国王室御用達の超高級紳士服店「ギーブス・アンド・ホークス(Gieves and Hawkes)」で修業を積む。

 日本ブランド「コウジ・タツノ(立野浩二)」やイタリアブランド「ロメオ・ジリ(Romeo Gigli)」の下で働いた後、英国の名門、セント・マーティンズ校で学ぶ。92年の卒業制作は英国「ヴォーグ(VOGUE)」誌のスタイリスト、イザベル・ブロウ(Isabella Blow)氏にすべて購入された。

 オンワード樫山グループのセレクトショップ運営会社、バスストップが96年から、「アレキサンダー・マックイーン」ブランドの取り扱いを開始。マックイーン氏は同年、「ジバンシィ」の主任デザイナーに就任した。96、97年と2年連続で英国の優秀デザイナー賞を受賞。初受賞の時点で26歳という若さだった。

 初のコレクション参加はロンドンだったが、2002年春夏からはパリコレに参加。「マックイーン」ブランドは2000年、グッチ・グループに買収された。

[現在のデザイナー]
アレキサンダー・マックイーン氏

[キーワード]
アバンギャルド、テイラーリング、サビル・ロウ、グッチ・グループ

[魅力、特徴]
 エッジィでゴージャス。この矛盾を成り立たせているのが、マックイーン氏のすごさ。「売れ線狙いは絶対にしない。金もうけに興味はない」と宣言している潔さがカッコいい。ボディにフィットする完璧なカッティングを堪能してほしい。

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