[解説]
シフォンやモスリンなどの「軽・柔」素材を得意とする、ウルトラフェミニンなブランドです。おだやかで優美なデザイン。「丁寧に仕上げられた」という言葉が単なる飾り言葉ではない細やかな仕事ぶりに、デザイナー、アルベルタ・フェレッティ(Alberta Ferretti)の職人気質が表れています。
単色ですっきりまとめたドレスが有名です。品よく見えるので、米アカデミー賞の授賞式でもフェレッティのドレスを着る女優が大勢います。ファンの1人が、米テレビドラマ「アリー・myラブ」に弁護士アリー・マクビール役で主演した女優のキャリスタ・フロックハート(Calista Flockhart)です。
ほかにも映画「氷の微笑」の主演女優として知られるシャロン・ストーン、「ボーイズ・ドント・クライ」のヒラリー・スワンク、「キル・ビル」のユマ・サーマン、「ロスト・イン・トランスレーション」のスカーレット・ヨハンソンらがフェレッティ好きだそうです。
フェイバリットカラーはモーヴ(mauve、藤色、えんじ)。グレーや,黒、ボルドー、モスグリーン、オリーブグリーンなど深い色が得意です。ヴィヴィッドカラーはあまり多用されず、ナチュラルカラーが主体です。
フェレッティの作品は、薄いパイ生地を何層も重ねたお菓子のミルフィーユを思わせる独特の素材感が持ち味です。使う生地はモスリン、シフォン、ジョーゼット、シルクデシンなど薄手で軽いものが中心です。カッティングの見事さもあって、ふんわりとした空気感が肌に寄り添います。
基本ラインはクラシックでイノセント。着る人につつましやかで清楚なイメージを与えてくれます。童話の世界を連想させるようなロマンティックな雰囲気が固定ファンを引き付けて離さない理由かも。フェミンなフォルムがお得意ですが、直接的なセックスアピールは控えています。自分をノーブル(高貴)に演出したいときにはうってつけといえるでしょう。
実家がドレス工房で、子供のころから布に親しんできただけあって、ドレープやプリーツなど、布の美しさを引き出すテクニックはさすが。ビーズ、刺繍、フリルといったクラフトワークにも抜群の冴えを見せます。
セカンドラインとして「フィロソフィ・ディ・アルベルタ・フェレッティ(Philosophy di Alberta Ferretti)」があります。「アルベルタ・フェレッティ」ではあまり見ないマイクロミニ・スカートやサロペットなどもあり、ほどよくセクシーなテイストが採り入れられています。
イタリアのブランドはセカンドライン(ディフューションライン)を含めて2段階のコレクションラインを持つケースがよくあります。「ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)」と「エンポリオ・アルマーニ(Emporio Armani)」、「プラダ(Prada)」と「ミュウミュウ(Miu Miu)」「ジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)」と「ヴェルサス(VERSUS)」、「マックス・マーラ(Max Mara)」と「スポーツ・マックス(Sports Max)」などがその例です。フランスの老舗ブランドと違い、オートクチュールを持たないイタリアブランドならではの戦略といえるでしょう。
●ブランドデータ
[本国] イタリア
[経営・日本での展開]
三井物産系のアパレル商社のサン・フレールが取り扱っている。2000年、東京・青山に日本初の路面店をオープンした。
「アルベルタ・フェレッティ」ブランドを展開するのは、イタリアの有力アパレルメーカー、アエッフェ社(Aeffe、本社マリニャーノ)。同社は「ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)」「モスキーノ(Moschino)」「ナルシソ・ロドリゲス(narciso rodriguez)」などのブランドの生産も手がけてきた。「モスキーノ」を展開してきたムーンシャドウ社は1999年、、アエッフェ社に買収され、社名を「モスキーノ」に変更した。
同社はデザイナーのアルベルタ・フェレッティ氏が創業し、共同創業者である弟のマッシモ・フェレッティ(Massimo Ferretti)氏が経営トップを務める同族企業。
[歴史]
アルベルタ・フェレッティ氏は1950年、アドリア海に面したイタリアのリゾート地、カトリカ(Cattolica)で生まれた。ドレス工房を経営していた母親に育てられ、幼いころから縫製やカッティングを身に着けた。
68年、わずか18歳でブティックをオープン。結婚し、2人の息子をもうける。1階がブティック、2階が住居、3階が工房という建物の中で技術を磨いていった。この店では「クリツィア(Krizia)」や「ジョルジオ・アルマーニ」「ジャンニ・ヴェルサーチ」なども取り扱っていた。彼女にとってはこのときの経験が、デザイナーとしての幅を広げつつ、自分独自のスタイルを確立する上で役に立ったようだ。
80年、弟のマッシモ氏と共にアエッフェ社を設立。服づくりのすべてのプロセスを自分でコントロールしたいという一種の職人気質がうかがえる。今も「アルベルタ・フェレッティ」「フィロソフィ ディ アルベルタ・フェレッティ」などの商品はアエッフェ社の工場で生産されている。
アエッフェ社は今やイタリアで指折りのアパレルメーカーに成長した。現役の第一線デザイナーが自ら国内有数の経営規模のアパレル企業と生産施設を抱え、しかもほかのデザイナーの商品を大がかりに生産しているという例は珍しい。
81年、ミラノコレクションに「アルベルタ・フェレッティ」ブランドで初参加。フェミニンなラインで高い評価を受け、現在では「イタリアで最も成功した女性デザイナー」の1人とされる。84年、セカンドラインのブランド「フィロソフィ ディ アルベルタ・フェレッティ」をスタート。「哲学」という意味のブランド名からは、自らのデザインポリシーに対する確固としたスタンスがうかがえる。
[現在のデザイナー] アルベルタ・フェレッティ氏
[キーワード] フェミニン、イノセント、モスリン、シフォン
[魅力、特徴] 身体にしなやかにフィットする軽やかな素材感。洗練された大人の女性向けのシックなテイスト。イメージとしては「アルベルタ・フェレッティ」が仕事用で、「アンナ・モリナーリ(Anna Molinari)」がオフ用というところでしょうか。
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